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週刊READING LIFE vol.172

あなたの仕事はなんですか、と問われて“愛”について考える《週刊READING LIFE Vol.172 仕事と生活》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース、ライターズ倶楽部にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2022/06/06/公開
記事:石綿大夢(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
あなたの仕事はなんですか、と問われると、非常に困る。
 
お金を稼いでいるもの、と括ってしまうのは、あまりにも早計に思う。多分それは、僕が俳優をしていて、それが大したお金になっていないからだろう。
俳優活動と並行して、他に生活の糧を稼ぐための仕事をしているのが現状だ。
 
しかし「あなたの仕事はなんですか?」と問われれば、僕は迷いつつも“俳優”と答えることにしている。それが僕が人生の中で、看板として掲げていきたい“仕事”だからだ。
しかし、仕事の定義をお金基準にしてしまうと途端に話は変わってくる。
厄介なのは、生活にお金がなくてはならないものだということだ。
お金がなければ、ご飯が食べられないし、本も買えなければ、電車も乗れない。
お金、という概念がいつ生まれたのかは定かではないが、人はお金に支配されて生きている、と本気で感じる。お金がなければ、出来ないことは多い。
しかし、お金のなさは、不利ではあっても、不能の原因ではない。
 
バレー漫画『ハイキュー!』(集英社 古館春一作)に、大好きなセリフがある。
主人公・日向翔陽(ひなたしょうよう)は、身長は低いがそのスピードとジャンプ力を発揮して、所属する烏野高校排球部は宮城県大会を勝ち進む。
初の全国大会・春高バレーに出場し、全国の猛者と合間見える。他校のライバルたちの試合を見ている中で、自分と同じくらいの低身長ながらチームの中心として大活躍を見せる星海光来(ほしうみこうらい)という選手に出会う。
彼は、サーブ、アタック、ブロックなどなど、攻撃に守備に大活躍で、所属する鴎台高校のエースだ。初戦を終え、スーパーヒーローのごとく活躍した星海は、試合後のインタビューで自身の低身長のことを話題に出され、ムキになってこう答える。
「小さいことはバレーボールにおいて、不利な要因であっても、不能の要因ではない」
 
 
バレーという競技にとって身長というのは、とても大切な要素だと思う。ネットを挟んで戦っていて、ボールを床に落としてはいけない以上、身長の高さや腕の長さは、高ければ高いほど、長ければ長いほど有利になる条件だ。
でもきっと、それは有利ではあるけれど、必要条件ではないし、それがあれば必ずしも有能というわけではない。
きっと身長だけあっても下手なプレイヤーはたくさんいるし、時にはその大きな体が足枷になってしまう時だってあるかもしれない。
お金も、きっとそうである。
もし僕にお金が十分にあったら、と考える。昔から欲が深い人間なので、欲しいものややりたいことは、数限りない。無限にお金があるのなら、時間の限り色々とやりたいことをやるはずだ。
俳優として、ということで考えれば、アルバイトに行く必要などなく、演技力を高めるためのワークショップやトレーニングにいくらでもお金をかけられるということだろう。
好きなだけ映画や舞台を観に行けるし、好きなだけ本が買えるだろう。
しかしそれは“有利”ということではあるが、有能の証明とはなり得ない。
実家が裕福で、お金の心配のない俳優が、夜な夜な飲み歩いている話をよく耳にする。
そういう俳優がみんな有能だったなら、こんなにわかりやすい話はない。演技の良し悪しは、そんなところで評価が決まらないから、裕福でも貧乏でも、一生懸命に稽古するのである。
 
 
お金は必要なものだ。お金がなければ、ご飯は炊けず、稽古場に行くこともできない。
だが、単純なことだが、お金がなければ働けばいいのである。いや、逆を言うのなら、働けばお金は手に入るのである。コンビニの店員でも、ウーバーイーツでも、働けばお金は手に入る。
現状、五体満足で健康体の僕にとって、その効率や絶対量にこだわらなければ、これは簡単なことだ。こうして手に入れたお金というものを使って、俳優をやっている人間はとても多いのだ。俳優という看板を、生活、つまり人生の中で掲げていくために。
僕も含めて多くの人間は、たまたま俳優という仕事が、現時点で、お金になっていないだけだ。
日本の俳優人口はゆうに3万人を超えるらしい。おそらくその10分の1も俳優の仕事で生活できてはいないだろうから、相当数の俳優が、俳優以外の仕事で生活をしていることになる。
生活というものを、飯が食えるというふうに言い換えるならば、俳優という仕事で飯を食っている人間はごくわずかなのだ。
 
 
では、俳優の仕事で生活できるほど稼げていない人間の仕事は、“俳優”ではないのか。
そもそも、お金が稼げること=仕事、という考えでいいのだろうか。
 
一般的にいうと、生活の糧を得ている職業=仕事と言えるだろう。多くの人が「あなたの仕事はなんですか?」と尋ねられれば、現状お金を稼いでいる職種を答えるはずだ。
今まで述べてきたように、お金がなければ生活は成り立たず、そのお金を稼ぐ作業が仕事と呼ばれるからだ。
しかし、仕事=“人生で掲げたい看板”と考えるとどうだろう。
 
例えば、サラリーマンとして働きながらなんとか時間を作って、大好きな写真を撮っている人もいる。文章を書くことでも、絵を描くことでもいい。
今挙げたような、いわゆる表現活動でなくてもいい。
音楽を聴くこと。映画を見ること。本を読むこと。
旅行をすること。釣りをすること。野球をすること。プラモデルを作ること。
 
なんでもいい。他のことよりそれをしている時間が楽しくて、それをしていることを考えるだけで、心に火が灯るような。そんな何かを見つけられれば、人間は幸せだと思うし、その看板を掲げて人生を生きていきたいと思うものなのかもしれない。
 
大切なのは、自分はどの看板を掲げたいか、自分に問いかけること。
そしてその看板は途中で架け替えてもいいということだと思う。
“好きを仕事に”というフレーズが流行ったのは、多分ユーチューバーが職業として認知されだしてからだろう。自分のこだわりの動画を制作し、その中で本当に楽しそうな彼らに憧れた少年少女たちは多い。
ユーチューバーだけではなく、好きを仕事にできれば、確かに最強である。
ギターを演奏するのが何より好きな人間がギタリストになったら、一日中ギターを触っていても怒られないのである。むしろそれは仕事熱心と見られるかもしれない。
これらの人たちは、早い時期からその掲げたい看板を見つけられた人間だ。
育っていく中で、見たもの聞いたもの触れたもの。なんらかの要素に触発されて、自分の目指したい看板を見つけていったのだ。
 
それを見つけるのが早い時期でなくとも、かまわない。
特にやりたいことはなく過ごしてきた人間が、ある時ふと自分のやりたいことに出会うこともあるだろう。別にそこで今までの仕事を辞める必要はないが、自分の中で掲げたい看板は変わってくるはずだ。
日中はサラリーマンをしながら、空いた時間は文章を書き、作家の看板を掲げたっていい。それに飽きて、写真を撮ることにハマったら、写真家の看板を掲げたっていい。
物理的に看板を設置するわけではないので、その交換は簡単だ。心で思うだけでいい。
今、自分は◯◯なのだ、と。
 
そして大切なのは、その看板で生活できるだけのお金を稼げなくとも、胸を張るということである。
多分その看板は、“生きがい”とも言えるのかもしれない。それでお金が稼げればよしだが、稼げなくともなんてことはない。そのものに対する自分の愛情は変わらないのだから、胸を張っていいのである。誇りを持っていいのである。
 
「あなたの仕事はなんですか?」
コミュニケーションの問題だったり、わかりやすさの問題だったりで、ひとまず答える職種はあるかもしれない。教師、書店員、インストラクターなどなど。とりあえずで名乗る必要がある場合、“今お金が稼げている仕事”を言う必要もあるだろう。
でも心の中では「自分は◯◯である」という看板を掲げていてもいいのである。
今まで聞いたこともなかった仕事や働き方が、今後もいくつも生まれるだろう。好きを仕事にする方法・お金を稼いでいく方法も多種多様になっていくだろう。
 
仕事は“お金を稼ぐ”という側面だけで考えるものではない。
看板を掲げる、つまり“生きがい”を見つけてそれに“愛”を注いでいくことも、仕事である。
そしてその連続が生活、つまりライフ。つまり人生というものなんだろうか。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
石綿大夢(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

1989年生まれ、横浜生まれ横浜育ち。明治大学文学部演劇学専攻、同大学院修士課程修了。
俳優として活動する傍ら、演出・ワークショップなどを行う。
人間同士のドラマ、心の葛藤などを“書く”ことで表現することに興味を持ち、ライティングを始める。2021年10月よりライターズ倶楽部へ参加。

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2022-06-01 | Posted in 週刊READING LIFE vol.172

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