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週刊READING LIFE vol.196

良い質問は、吹き当てる風《週刊READING LIFE Vol.196 「いい質問」の共通点》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/12/05/公開
記事:ロビンソン 安代(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「何か質問はありますか?」
 
何かの講義や講座を受けているときにこう言われると、私は困る。
質問が浮かぶ事がまず、ないからだ。講義をしてくださる方に
申し訳なく感じ、質問が浮かばない=ちゃんと聞いていなかった
ような気もして、恥ずかしくて下を向く。
私は質問をするのが苦手だ。
 
数日たってから、「あれを聞いておけばよかった」
「こういう場合はどうなるのだろう」などと疑問が湧いてくる、事もあるが、
ほとんどの場合、誰かが質問をしているのを聞いて初めて、
 
「確かにそれ、わからないかも」
「ほんとだ。その部分もっと詳しく知りたかったかも」
 
などと思う。
だから、私は個人講義より集団講義の方が、理解が深まりやすい。
 
さて、普段コミュニケーションをしていると、誰かに質問したり誰かから質問を
受けたりすることが多々ある。
一口に質問と言っても、情報を得るためという目的:
つまり必要に迫られてする質問もあれば、
ただ仲良くなりたくてする質問もある。
沈黙が心地悪くてする質問もあるだろう。
質問とは名ばかりの「口撃」もある。
夫婦喧嘩や、悪いことをした子どもに青筋を立てながら質問するときは「口撃」になることも多い。
夫や息子、娘、ごめんである。
 
 
仲良くなろうとしている場合も、細かく言えば、質問には軽さ、重さ、
特徴、使い方が様々あり、それらを巧みに使い分ける人達がいる。
 
大学~独身時代、私は合コンを頼まれることが多かった。頼まれると断れない
「真面目な」性格なのと、ヒューマンウォッチングが楽しかったのとで、
合コンの幹事をよく引き受けていた。
ある時、後輩たちが私の事を「合コン・クイーン」という隠語で呼んでいるのを知った。
みんなのために引き受けてあげていた(だけではないが) のにまったく失礼な輩たちである。
 
それは良いとして、
合コンの幹事になると、全体に目を配る必要がある。
そのため、堂々と参加者の様子を観察することができた。
私には嬉しい限りだった。ヒューマンウォッチングはとても楽しい。
 
すると、見えてきたことがある。
最終的に皆から連絡先を聞かれる、いわゆるモテる人には
「質問がうまい」という共通点があるのだ。
 
彼らは、質問を使いこなす。
 
例えば、合コン開始直後は、
「どこに住んでるの?」「お仕事は何をしているの?」「幹事とはどんな関係?」など答えやすい
一問一答なものを彼らは選ぶ。
 
これが、中盤になるともう少し相手の人柄を知る質問になっていく。
上手に相槌を打ちながら、相手の「中身」が出てくるような質問をする。そして、相手の話の中にあったことに関して、自分の感想を述べながら深堀ってみたり、そこから矛先を少しその周辺へ向けて、話を展開させていく。もちろん周りにいる人たちも巻き込みながらだ。自分の感想を述べるのは意外と大事で、それが自己開示となり、相手からも質問しやすい雰囲気を同時並行で作っていくのだ。相手たちが話すのが7に対して自分が話すのが3くらいの割合で進めていく。
 
例えば、「今まで一番大変だったお客さんってどんな人」
「えー!? 大変だったね。それでどういう風に対処したわけ?」
「確かに〇〇さんのようなところだとそういう人が多そうだわ」
「私/僕の周辺では逆にこんな人が多いよ」など。
会話は途切れることが無く、盛り上がりを見せる。
 
そして合コン終了間際になってくると、今後の進展が見込めるかどうかの探り合いになっていく。
付き合ってみたい俳優さんのタイプを聞いてみたり、そこから好きな異性のしぐさやタイプに広げていったり、その中でさりげなく今付き合っている人がいるかどうかの確認をしてみたりして、
最終的に連絡先の交換をするか否かの判断をしていくのだ。
軽→中→重、前菜→メイン→デザートへのグラデーション。鮮やかな移行である。
私はその様子をひそかに「匠の技」と認識し、尊敬していた。
 
 
質問の匠は、営業畑にもかなりの確立で存在する。
私は数社で営業をしていた事があるが、共通して営業の基本として教えられていたのは、
まず相手と会話し、信頼関係を築くこと
その後「詰問」にならない自然な流れでの質問をしていき、
相手のニーズをつかむこと
3.その後に、相手にぴったりの商品をさらりとおすすめすること
 
だった。
雑談の中での自然な質問&回答のやり取りでニーズをつかむまでは
商品の説明をするなという上司もいたくらいだ。
 
個人に対して、高額化粧品や何十万もする英会話レッスンという商品を売るという商売だったから、
というのも大きかっただろう。
一個人に対してビジネスライクに質問をしていたら、
「売りつけようとされている」ギラギラ感が出てしまったり、
冷たい感じに受け取られ、引かれてしまうからだ。
日本で個人に対して高額の何かを売ろうと思ったら、
できる限り控えめで温和で感じよく、が大切だろう。
 
実際、営業成績の良い「スーパー社員」というのは、
当たりはソフトで押しが弱く(弱そうに見えるだけで実際は頭の中で色々シミュレーションし、様々な計算を高速でしていたりする)、
やはり雑談が極めて上手な人々が多かった。
こんな人が? という人が売り上げNO.1というのは珍しくない。
 
彼らは、雑談の中で相手が思い描いている商品の要素やイメージ、その背後にある「こうなれたら良いな」という隠れた欲望・願望まで明確に把握していた。
商談が成立した後で「スーパー社員」に話を聞いてみると、「あの質問の意図はこれ」、「その後の質問の意図はこれ」「その後の質問でこれが分かった。ゆえにこれをお勧めした」
などの説明を理路整然としてくれるので感嘆したものだった。
 
その後、20年弱が経ち、
私は小学校の先生方に対して英語授業に関する研修をしたり、授業を参観してアドバイスをするというような仕事に就いたことがある。
1年半という期間限定の仕事だったが、その間は今までと違い、
私が質問を受けることが多かった。
ここにも、とても良い質問をする方が時々いらした。
 
そういう方々は、どんな質問をされてきていたかというと、
・その質問への回答で、私が話していた事の補足ができるような質問
・具体的な行動に移す際にどうすればうまくいくかのイメージを求める質問
・実際の授業の組み立て方などに関するステップの詳細を尋ねる質問
・新たな課題が見つかるような質問
である。
 
彼らの多くは日々、英語授業に積極的に関わっている、または関わろうとされている方たちだった。
講義の内容に関して「自分事」として、実際に行うことを前提に具体的に自分の頭で
想像しながら考えている方たちだった。
だから重要ポイントに「ピント」が合っていることが多い。
 
だからこそ、その質問とそれに対する回答で、
対象としている内容についての
新たな側面が浮き彫りになったり、
今までなかった気づきを促すことがあったり、
研修の内容をさらにもう一段深いものにすることにつながっていくことにつながるケースが多かったように思う。
 
ベテランの先生ならではの着眼点や考察、良い質問もあったが、
新任の先生で良い質問をされる方もとても多かった。
 
経験のある・なし、よりは、「対象」に対するその人の向かい方や、
コミットメント(関与・責任) の深さ、理解度、思考の傾向、
前向きかどうかが、「良い質問」に影響しているようだった。
 
 
私たちはコミュニケーションを取りながら、何かを伝えようとする。分かろうとする。
でも、お互い別の脳みそで考えている他人だ。共通して認識できる部分はとても少ない。
 
もちろん、言語を駆使して、時には映像や実物を見せながら、できるだけわかりやすく
伝えようとする。だがやはり、こちらの考えを100%の解像度で相手に伝えるには
限度がある。
 
そんな時、質問というのは、
霧の中おぼろげに見えている対象物に外からピンポイントに質問という「風」を当て、その対象物を
よりはっきり見えるようにし、理解を促すための試みのようなものだ。
 
伝える人間は、対象物に
右から左から、上から下から、斜め上から斜め下から光を当てて、
内容を相手に伝える。
 
相手は、わかりにくいと思った部分に対して「質問風」を当てる。
強さや角度を変えながら、または移動しながらその風を当てたりして
質問を繰り返し、
対象物をよりわかろうとすることもある。
 
時に人は、自分に自問自答という「風」を当てて、自分をより理解しようと
試みる時さえある。
 
 
その結果、球体だと思っていたけれど、突起がいくつかあるのが見えたり、
小さいと思っていたけれど、めちゃめちゃ奥行きのあるものだと分かったり、
大したものでないと思っていたけれど、表面の輝きがすごいものだったり、
一本道だと思っていたら、かなり複雑に枝分かれしていたことがわかったりする。
 
 
【あまり良い質問でない時】は、
そもそも風が違う方向を向いていて、対象物に当たっていなかったり(的外れな質問)
対象物を布で覆ってしまおうとするものだったり(回答者に自由のない誘導尋問や詰問)
風が弱すぎて対象物に当たらず、
従って全然クリアに見えないままだったり(ちょっとググればわかるような基本的なことを質問)
 
するような感じなのかなと個人的には思っている。
 
 
逆に【良い質問である時】というのは、
対象物に、良い感じに「質問の風」が当たり、
よりくっきりと、姿かたちが見えて、理解できる。
その質問をし、回答者が回答することで、双方に向けて、
対象物の新たな側面への道が切り開かれたり、
あるいは、新たな側面自体が明るみになる。
 
という共通点があるように思う。
合コンでの「質問の匠」、「スーパー営業社員」、「良い質問をされてきた先生方」が行っていた質問というのは、このように対象となるモノ・人をより深く多面的に理解するのに大きく貢献するものだったのだ。
 
 
ただ、対象物の新たな側面が明るみになるとはいえ、
質問をする時には注意した方が良い点もある。
 
それは相手との関係性だ。
 
合コンの「質問の匠」や営業人がうまく意識していたように、
関係性を念頭に置きながらの雑談が大切だ。
関係性が希薄な時には、
希薄な関係性でも答えられる質問にしておいた方が良い。
 
私は国際結婚をしているのだが、
我が子が小さい頃、彼らを連れて公園で遊んでいた時や、子どもの学校で新しい方と知り合った時、
新しい美容院に行ったときなど、カタカナ苗字や子どもの見た目で私が国際結婚をしているのが
分かると、初対面の相手なのに、
 
「旦那さんとはどのように知り合ったのですか?」
などという質問を受けることが高頻度で、あった。
 
私に興味を持ってくださっていると分かり嬉しい反面、
人見知りな私に話題を提供してくださってありがとうと思う反面、
 
別に何かやましいことがあるとかそういうわけでは全然ないが、
「だいぶプライベートな質問だよなあ……。普通、初対面で相手にそういう事訊くだろうか?」
と、少しばかり違和感を感じることがあった。
いや、質問してくれるのは、本当にありがたいのではあるが、である。
 
質問というのは、対象物に「風」を当てる行為だ。
対象物が人間である場合、それが強すぎたり、角度が絶妙に恥ずかしい場所に直撃していたり、粘膜で繊細なところ、ケガをして痛みのある部分にあたるなど、相手にとって不快感をもたらす場合もあるという事を忘れてはいけない。
 
それに、相手を「風」で強く押しすぎてしまうと、
相手は身構えてなかなかその姿を見せようとしてくれない。
新たな側面はおろか、カバーシールドを張られてしまう事もある。
 
良い質問とは、そうした相手への配慮:大人な作法も
内包するものだと思ってやまない。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
ロビンソン 安代(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

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2022-11-30 | Posted in 週刊READING LIFE vol.196

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