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週刊READING LIFE vol.199

「愛と恋って、なにが違うの?」離婚した両親に聞いてみた《週刊READING LIFE Vol.199 あなたの話を聞かせて》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2022/12/26/公開
記事:冨井聖子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「ねぇ、愛と恋って、なにが違うの?」
 
そんな疑問を持ったことがある人は、とても多いと思う。
学生時代かもしれない。
大人になってからかもしれない。
 
【愛と恋の正解】
 
いつの時代かはわからないけど、人間だれしも一度は、はまる落とし穴のように思うのだ。
私も多分に漏れず、恋愛というものを過去に何度も経験をしてきたはずだった。
はじめて彼氏ができた中学時代。付き合ってると思い続けていたのは、私ひとりで、彼氏は私の友人に告白していたという、初彼氏にしてはビターすぎる経験をした。
 
「学生時代の恋なんて、結婚しない限り別れるじゃない?」
という極論を振りかざしたまま、3か月で彼氏が変わるということも多数経験したし、ここに書くには、はばかられるような体験もあった。
一番長く付き合った彼氏は、1冊の本が書けるのではないだろうか? と思うほど、付き合っていたのにすれ違い、意地を張りつづけた若い恋だったように思うのだ。
 
いま、10年ほど前にご縁があって結婚もし、子どもも2人授かって毎日を過ごしている。親が子を思う「愛情」というものにも、触れるようになった。自分が親としての立場に変わったからこそ、感じられるようになったのだ。
 
でも、である。
 
「ねぇ、ママ。恋って何?」
と小学生の子どもに聞かれるものの、いまだに恋と愛の違いを正確には把握していないし、正解なんて持ち合わせていないのだ。
 
なんとなく?
雰囲気で?
ノリと勢いで?
 
ふわっと曖昧な様子としてはわかっているけれども、これといった答えはない気がするのである。
 
恋愛の格言で調べても、いろんな考え方が出てくる。
文豪、夏目漱石の「月がきれいですね」。
天才物理学者のアルバートアインシュタインの「誰かを愛することは、義務的な教育より多くのことを教えてくれる」。
太宰治の人間失格の中で展開される恋愛論も、今になってなんとなくわかるようになってきたのも事実だ。
 
本当は正解なんてないのかもしれない。
正解は、実は、かくれんぼしているだけなのかもしれない。
もしくは、正解があるのにもかかわらず、表現方法が違うだけなのかもしれない。
 
そんなことを思ったときに、離婚した両親にも聞いてみたくなったのだ。
 
「ねぇ、愛と恋ってなにが違うの?」
 
私自身そんなことを聞く歳ではない。
そんなことを聞けるような間柄でもない。
でも、だからこそ聞いてみたいと思ったのだ。
 
親の恋愛話を「そういうこともあるよね」と一人の人間が生きた過程として、受け止められるようになったのだから。
 
親も人間である。
若いときもあった。
子ども時代もあった。
恋愛の感覚は、そのひとの軸や人格をつくっている場合もある。
だからこそ、親を再認識するいい機会かもしれない。
 
私の両親は、破天荒になりたい普通な父と、普通になりたい変わった母。
父親はバブルのときにバリバリの営業マンをしていて、バブルの恩恵を「これでもか」と受けた世代である。その時代背景も相まって、競馬もパチンコも株も手を出していたし、飲み歩くのは男の性。お金は血と涙と汗の結晶だ。
そう豪語する。
努力に勝る天才なし。そう育てられた。
よく言えばアクティブな父である。悪く言えば破天荒、今でいうパワハラに近いものもあった。
外にいれば「いい男」「モテる男」
家庭の中では「家庭人は向かない男」
そんなふうに表現ができると思う。
良くも悪くも、自分の趣味に忠実。
結婚していたけれども、世間一般の父親という生き物とは、かけ離れた人だったと思う。俗にいう父親らしさ、と呼ばれるものを山の中に落としてきたような人だった。くたびれ感や安心感、穏やかな感じもないし、やつれたり太ったり、そんな感じもゼロに近い。
 
よく言えば少年のような……悪く言えば、家庭に染まれない人だった。
 
だからこそ、母は非常に苦労していたように思う。
友達の結婚式があれば、毎週続いても普通に参加をする。
家庭の予算などは気にしない。
いつまでも独身気分が抜けない人だったのだろう。
昔は怖い父だったが、今では厳格な父というより、やんちゃの度が過ぎたお兄ちゃん……兄貴のような人である。
 
母親は、もともと子供が大好きな保育士。
だからこそ、私たちが生まれてからは、全力で子どもに尽くしているような母だった。
家のこともきちんとやりたい。
「理想はサザエさんみたいな家庭なんだ」ってよく言っていた。
いま、自分自身が家事をするようになって思うが、フルタイムで働き、私たちの習い事の送り迎えもし、家事もほとんど行っていた母に、自分の時間なんてものはひとつもなかったのだろう。
一人でこっそり食べていた「アーモンドチョコレート」が、母の楽しみだったのかもしれない。
ときどき連れて行ってくれる外食が、楽しみだったのかもしれない。
でも、母が「1人の女である自分」や「自分自身に戻る時間」は皆無だったように思うのである。
 
そんな父と、母なのだ。
理想のサザエさんの家庭を思い描きつつも、対極にあるような家庭だった。
 
ひとりひとりの良さはそれぞれあるのに、混ざりあうと個性のぶつかり合いのような両親だったので、私が結婚する2年前に離婚した。
私が結婚しようとして戸籍を取り寄せたら、私には一報もなく父親は再婚していたという、衝撃的事件まで起こしているが、時すでに遅し。
すでにその方とも別々の道を歩んでいるのだから、父親もなかなかである。
 
この父と母が思う「愛と恋」って何なのだろうか?
 
恋に生きてる父。
愛に生きてる母。
私はずっとそう思っていたのだから。
 
思い立ったら吉日だ。
父親に電話をかけた。
 
呼び出し音が鳴る……。
プルル……プルル……。
何度呼び出しても出ない。
どうしよう、こんなこと聞くべきじゃないのかもしれない。
今更言われても仕方がないことなのかもしれない。
不安がよぎる。
もう切ろうと、ボタンを押す直前にプチっと鳴った。
「……なんだ?」
不機嫌そうな声とともに、父親が出た。
 
「いや、あのね……」
「用事がないなら切るぞ。今、起きたとこなんだ」
「もう16時だけど」
「だからなんだ。俺の勝手だろ? 要件は?」
 
この雰囲気の中、聞くしかないのか……。
でも今聞かないと、きっと一生聞けないだろう。
「あのね、愛と恋の違いって何? 恋多き父に聞いてみたくて」
「そんなの勝手になるもんだろ」
 
補足が欲しい答えが出てきた。
父は、母以外にも2人の元嫁がいるのだ。3回は結婚した。
つまり、結婚したいと思えるほどの人に、3回も出逢い、結婚できているのである。離婚もしているが、いまどきの若い世代からすると、ファンタジーの中にリアルに生きているのだ。ある意味「結婚できる男」なのである。
そんな恋多きタイプが語る恋愛論って何なのだろうか?
 
「恋なんか勝手になるもんだろ?」
「もう少し補足が欲しいんですが?」
「あぁ……。恋と愛は違うもんだ。ただし、恋は一方通行で、愛はお互いに受け止める両方向なんだ。お前な、寝起きの父に聞くことじゃないだろ」
 
そんなふうに言うのだ。
つまり、まず勝手に好きになる。
その時点では一方通行なのだ。
そこから恋と恋……つまり一方通行同士が向き合ったときに、初めてお互いの思いを認め合って愛になるらしい。
「これ多分正解じゃね?」って鼻で笑って電話を切られた。
 
正解も、へったくれもない。
残念なことに、私は正解を持っていないし、正論を聞きたいわけではなく、父の感性が知りたかったのだ。
 
父が語る愛は、好きの思いが向き合ったときに初めて生まれるものだった。

 

 

 

その勢いのまま、母親にも電話。同じ質問をぶつけてみた。
 
「恋と愛は違うものよ。恋は知らないうちに落ちてるし、恋は育むとは言わないでしょ? でも、恋に落ちて、と言うのだから」
たしかに、と思う。
読書好きな母親が言いそうなセリフでもあった。
 
「好きな人がいないっていう人もいるけど、そんな人がいてもいいと思うのよ。だって、恋は落ちるものだし、気づくものだよね。
愛は自然発生的なものでもあるしね。ほら、子どもに愛してるって使うし親にも愛してるって使うけど、子どもに恋はしないし、親に恋はしないもの。
愛は注ぐもので、育むもの。
だからこそ、好きじゃなくても結婚ってできると思うのよ。だって、そこから愛を育むかもしれないから。そこから好きになるかもしれないから」
 
つまり、誰かを大事にしたいという思いすべてを愛情ととらえているのかもしれない。そんな風に感じるのだ。母の愛なのか、女性の愛なのかはわからないけど、父親とは違い、広い海のようなイメージが出てきた。
 
「結婚生活を、生活のため、と割り切れる人ってたくさんいると思うのね。私は、好きな人と以外寝れないようなタイプだから、仮面夫婦なんか嫌だし、生活のためって割り切れないけど。
お給料を稼いできてくれて、子どもたちも、その人になついていて……そこに好きという気持ちがなくても、生活のためだからって割り切れる人間も確かにいるはずよ。愛から恋が生まれることもあるしね。
居心地の良さから、愛に変わることもある。だからこそ恋は気づきだなーって思うのよ」
 
仮面夫婦であっても、それぞれが納得しているのならそれでいい。
好きという気持ちがないと夫婦ができないわけじゃない。
予想以上に、格言めいた言葉が飛び出し、気軽に聞いた私は戸惑ってしまった。
とあるドラマにあった【愛しているけど、好きじゃない】
そんなセリフも思い出した。
 
「だから学生のうちって、そんなに経験がないからこそ、鈍感だったりするわよね。そうすると周りが気づいて、あの人に恋してるんじゃない? って言ったり、教えてくれたり。好きを意識させてくれるでしょう? そういう子って本当にありがたい存在よね」
無意識に目で追っている。
無意識に考えてしまう。
そんな状態が恋なんだと、私に教えてくれたのは誰だったのだろう。
そんなことはもう覚えていなくても、教えてくれた人や本があったから、恋や愛を考えることができるのかもしれない。

 

 

 

父は、恋からの発展の愛、双方向の思いのやり取り、ととらえていた。
母は、愛と恋は完全に別物だけど、グラデーションみたいなもののようにとらえている気がするのだ。
 
それでも、結果論として、父も母も離婚しているから、興味深いなと思う。
 
お互いに恋ではなくなったのか?
うまく愛にシフトできなかったのか?
認め合うことができなくなったからなのだろうか?
 
子どもの立場から考えても、きっと核心にはたどり着けないのだろう。
やはり夫婦のことは夫婦にしかわからないのだ。

 

 

 

ねぇ、愛と恋って何が違うの?

 

 

 

その答えは、恋に落ちた人は知っている。
その答えは、愛を育んだ人は知っている。
 
それでもなお、100人いれば100通りの恋があり、100人いれば100通りの愛がある。きっとそれは、どれが正解とかではなくて……
 
届けたい人に、届けたい形で届くこと
それをやさしい気持ちでうれしくなって受け取ること
 
ただそれだけなのかもしれない。
 
100人が納得する正解ではなくて、本当に大切なあなたにさえ、届けばいいのだろうなぁ、と感じる今日この頃である。
愛のカタチも、恋のカタチも、あなたに合っていれば、それでちょうどいいのかもしれない。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
冨井聖子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

北海道生まれ、北海道育ち。
15歳以上年上の夫と小学生二人の母でもあり、個人事業主として独立している。
料理教室のかたわら、コラムニストとしても活動中。
趣味で始めたブログ投稿サイトでも、有料で購読してくださる方が徐々に増えている。等身大で悩み、向き合い、言葉にしているコラムは、男女問わず支持されている。

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2022-12-21 | Posted in 週刊READING LIFE vol.199

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